まぶたが腫れている(痛みなし)
まぶたが腫れているのに痛みもかゆみもない場合があります。
腫れている箇所が、片目のまぶたのごく一部であり、
2~4mm程度の小さなしこりである場合、それは霰粒腫(さんりゅうしゅ)である可能性が高いです。
霰粒腫は各種の薬物治療に対する反応が小さいため、経過観察だけを行うことが多いですが、炎症を伴い痛みが出てくると、麦粒腫(めばちこ)に準じた抗菌治療が必要になります。
両目または片目のまぶた全体が腫れている場合は実にさまざまな原因が考えられます。
痛みはないものの、かゆみを伴う場合は、アレルギーが関係している場合が多いです。
アレルギー性の眼瞼腫脹というべき状態です。
これには接触性皮膚炎とじんましんの2種が含まれます。
接触性眼瞼皮膚炎は化粧品などの化学物質や金属などで生じるものです。
両目のまぶたに同じように接触していれば、必ず両目に症状が出そうなものですが、意外とそうでもなく、
片目のみ腫れるケースもみられます。
かゆみを伴う場合が多いのですが、目立たない場合もあり、このとき原因が判明しにくくなります。
慎重に問診を行ったうえで診察をして診断をつけます。
根治するには、原因を除去する必要があります。
原因不明な段階では、対症療法として各種点眼・軟膏・内服治療を考慮します。
じんましんは一時的にかゆみを伴いつつまぶたが腫れるものです。
全身の一症状として、まぶたにも出現するときは分かりやすいのですが、
まぶただけに出る場合は、診断が難しいと思われます。
食物、ほこり、寒冷、温熱、光線などが原因となり得ます。
いずれの疾患も症状の程度に応じて投与する薬剤が異なります。放置して自然に治ることが多いので、とくに小さなお子様でかゆみが強くない場合は何も処方しないケースもあります。
しかしアレルギー性結膜炎の所見が強く認められる場合は、これにより眼瞼腫脹を来たしている可能性もあるため、抗アレルギー点眼を処方します。
また、腫れの程度が著しい場合は外見上の具合が悪いので、抗アレルギーの内服薬(抗ヒスタミンなど)を処方することが多いです。
比較的若い女性などに多くみられるかゆみも痛みもないまぶたの腫れについては、
甲状腺の疾患(甲状腺機能亢進症・低下症)を考慮する場合があります。
上記のアレルギー性眼瞼腫脹の可能性が乏しい場合には、甲状腺による眼瞼腫脹を考え、さらに詳しく問診を追加します。
そのうえで必要と判断した場合には、血液検査を行います。
これにより、バセドー病(甲状腺機能亢進症)が見つかることもまれではありません。
最後に中高年以上に多いまぶたの腫れですが、心疾患や腎疾患による眼瞼腫脹があります。
心不全や腎不全により全身の循環不全が生じ、結果としてまぶたも腫れる場合です。
全身の他部位が腫れることも多いため、診察室に入ってこられる瞬間に全身を目視して既往を聴取すれば診断をつけることができます。
このときの眼瞼腫脹は全身の状態改善がなされるまで続くことになります。
眼科医ができることは限られていますので、全身管理のできる主治医の治療を優先して頂きます。
ただし上記アレルギーなどの病態が加わっていないことを確認する必要があります。
参考文献
「主訴と所見からみた 眼科 common desease」(「眼科」臨時増刊号、金原出版、2018年)
「主訴からみた眼科疾患の診断と治療」(「眼科」臨時増刊号、金原出版、2003年)
「主訴・所見からのアプローチ」(新図説臨床眼科講座 1、メジカルビュー社、1998年)
「主訴からみた鑑別診断」(図説眼科鑑別診断 1 、メジカルビュー社、1987年)
「症状からみた鑑別診断」(図説眼科鑑別診断 2 、メジカルビュー社、1987年)
「診療眼科学 第1巻 診断編」(金原出版、1986年)